2026年12月分(2027年1月の口座引き落とし分)から、iDeCoの拠出限度額が大幅に引き上げられます。企業年金のない会社員なら月23,000円が62,000円に、公務員は月20,000円が54,000円になります。掛金を変更したい人の受付は2026年9月ごろから始まります。つまり今です。
そこで計算機を作りました。ただし、よくあるiDeCo計算機とは作りが違います。
世の中のiDeCo計算機は、ほぼ「入口の節税額」しか出しません。でもiDeCoは非課税ではなく課税の繰延べで、受け取るときに税金がかかります。会社の退職金がある人だと、入口で得した額を出口でそっくり吐き出すことがある。この計算機はそこまで引いた正味のメリットを出します。
入力はすべてブラウザの中で処理され、どこにも送信されません。
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※ 社会保険料は年収の15%として概算しています。配偶者控除・扶養控除・生命保険料控除などは含めていないため、 実際の節税額はこれより小さくなることがあります(それらの控除で課税所得が下がっているほど、iDeCoの節税効果も小さくなります)。 給与所得控除・基礎控除・所得税の速算表・退職所得控除はいずれも国税庁の現行の表を使い、復興特別所得税(2.1%)と住民税10%を含めています。 運用は年利÷12の月複利・毎月末拠出。受け取りは全額を一時金でとった場合の計算です (年金として分割で受け取ると公的年金等控除が使え、結果が変わります)。 掛金には別途、口座管理手数料(月171円〜)がかかります。
2026年12月から、いくらまで出せるようになるか
厚生労働省の資料にある改正後の限度額です。
| 加入区分 | 現在(月額) | 2026年12月分から | 増額 |
|---|---|---|---|
| 会社員(企業年金なし) | 23,000円 | 62,000円 | +39,000円 |
| 会社員(企業年金あり) | 20,000円 | 62,000円※ | +42,000円 |
| 公務員 | 20,000円 | 54,000円※ | +34,000円 |
| 自営業・フリーランス(第1号) | 68,000円 | 75,000円※ | +7,000円 |
| 第3号被保険者 | 23,000円 | 23,000円 | 据え置き |
※ 会社員(企業年金あり)は企業年金等の掛金と合算して62,000円が上限。公務員の54,000円は62,000円から共済掛金相当額8,000円を引いた額。自営業は国民年金基金等と合わせて75,000円が上限です。
あわせて、掛金を出せる年齢の上限も65歳未満から70歳未満になります。50歳から始めても最大20年間積み立てられる計算です。
- 掛金額の変更は手続きが必要です。何もしなければ今の掛金のまま
- 受付は2026年9月ごろから。e-iDeCo(オンライン手続き)は2026年12月1日〜24日
- 窓口は加入している運営管理機関(金融機関)です
入口:年収でいくら戻るか
iDeCoの掛金は全額が所得控除になります。戻ってくる額は「掛金 × (所得税率 + 住民税10%)」でほぼ決まるので、年収が高いほど得という仕組みです。
現行の上限(月23,000円)と、改正後の上限(月62,000円)で並べました。
| 年収 | 課税所得の目安 | 所得税率 | 月2.3万円 | 月6.2万円 |
|---|---|---|---|---|
| 300万円 | 99万円 | 5% | 41,690円 | 112,381円 |
| 400万円 | 158万円 | 5% | 41,690円 | 112,381円 |
| 500万円 | 213万円 | 10% | 50,879円 | 121,570円 |
| 600万円 | 278万円 | 10% | 55,780円 | 150,362円 |
| 700万円 | 352万円 | 20% | 78,242円 | 172,824円 |
| 800万円 | 427万円 | 20% | 83,959円 | 226,325円 |
| 1,000万円 | 597万円 | 20% | 83,959円 | 226,325円 |
| 1,200万円 | 767万円 | 23% | 92,413円 | 248,378円 |
年間の節税額(所得税+復興特別所得税+住民税)。社会保険料は年収の15%として概算し、基礎控除以外の控除は入れていません。
公務員の場合はこうなります。
| 年収 | 月2.0万円(現在) | 月5.4万円(改正後) | 差 |
|---|---|---|---|
| 500万円 | 45,441円 | 107,069円 | +61,628円 |
| 600万円 | 48,504円 | 130,961円 | +82,457円 |
| 700万円 | 70,966円 | 153,423円 | +82,457円 |
| 800万円 | 73,008円 | 197,122円 | +124,114円 |
出口:iDeCoは「非課税」ではなく「課税の繰延べ」
新NISAは出口が完全に非課税です。iDeCoは違います。受け取るときに課税されます。
一時金で受け取る場合は退職所得として扱われ、次の式で計算されます(国税庁 No.1420)。
(受取額 − 退職所得控除額)× 1/2 = 退職所得
退職所得控除額は勤続年数(iDeCoなら加入年数)で決まります。
| 年数 | 退職所得控除額 |
|---|---|
| 20年以下 | 40万円 × 年数(最低80万円) |
| 20年超 | 800万円 + 70万円 ×(年数 − 20年) |
控除の範囲に収まれば税金はゼロですし、超えた分も1/2しか課税されません。優遇はされています。問題は、この控除を会社の退職金と共有することです。
会社の退職金があると、控除を食い合う
同じ年に会社の退職金とiDeCoの一時金を受け取ると、退職所得控除はそれぞれに1回ずつではなく、長いほうの勤続期間で1回だけ計算されます(国税庁 No.2735)。
具体的に見ます。35歳・年収600万円・月6.2万円を65歳まで30年拠出・年利4%・勤続38年という条件です。
- 65歳時点のiDeCo資産:4,303万円(元本2,232万円+運用益2,071万円)
- 30年間の累計節税:451万円
- 運用益が非課税だったメリット:421万円(特定口座なら20.315%かかっていた分)
- 入口+運用のプラス合計:872万円
ここから出口の税金を引きます。
| 会社の退職金 | 出口で増える税 | 正味のメリット |
|---|---|---|
| 0円 | 333万円 | +539万円 |
| 1,000万円 | 552万円 | +320万円 |
| 2,000万円 | 793万円 | +79万円 |
| 3,000万円 | 948万円 | −76万円 |
退職金が3,000万円ある人は、30年間iDeCoを続けて正味マイナス76万円です。451万円の節税をしても、出口で948万円取られるからです。
勤続38年の退職所得控除は2,060万円。退職金3,000万円だけでも既にこれを超えています。そこにiDeCoの4,303万円が乗ると、合計7,303万円から2,060万円を引いた5,243万円の半分=2,621万円が退職所得になり、所得税の40%の区分に入ってしまいます。
退職所得は分離課税ですが累進課税です。一度に大きな金額を受け取るほど税率が跳ね上がります。
受け取る年をずらすと、結果が変わる
同じ年に受け取るから食い合うのであって、年をずらせば別々に控除を使えます。
ただし、いつでもいいわけではありません。国税庁 No.2735 には調整の対象になる期間が書かれています。
| どういう順番か | 見られる期間 | 実質的に必要な間隔 |
|---|---|---|
| 退職金を先に受け取り、あとでiDeCoの一時金 | 前年以前9年内 | 10年 |
| iDeCoの一時金を先に受け取り、あとで退職金 | 前年以前19年内 | 20年 |
つまり現実的な選択肢は「退職金を先に受け取り、iDeCoは10年あとに受け取る」です。iDeCoは75歳まで受け取りを待てるので、60歳で退職金を受け取った人なら71歳以降にiDeCoを受け取る、という設計になります。
先ほどと同じ条件で、ずらした場合と比べます。
| 会社の退職金 | ① 同じ年に受け取る | ② 10年ずらす | 差 |
|---|---|---|---|
| 0円 | +539万円 | +416万円 | ①が122万円有利 |
| 1,000万円 | +320万円 | +416万円 | ②が96万円有利 |
| 2,000万円 | +79万円 | +416万円 | ②が338万円有利 |
| 3,000万円 | −76万円 | +416万円 | ②が492万円有利 |
受け取る年を変えるだけで、退職金3,000万円の人は492万円変わります。掛金を増やすより、商品を選ぶより、この判断のほうが金額として大きい。
退職金がない人は、逆に「同じ年」が有利
上の表の1行目に注目してください。退職金がゼロの人は、同じ年に受け取るほうが122万円有利です。
理由は控除額です。同じ年に受け取るときは長いほうの勤続期間で控除を計算するので、勤続38年なら2,060万円。一方、iDeCo単独だと加入30年で1,500万円にしかなりません。560万円ぶん控除が大きくなるわけです。
つまり「ずらせば得」は退職金がある人の話であって、万人に当てはまるルールではありません。自営業の方や退職金のない会社にお勤めの方は、逆の判断になります。
掛金を増やすほど得、とは限らない
もうひとつ、計算して初めて見えたことがあります。退職金2,000万円・勤続38年・同じ年に受け取る条件で、掛金だけを変えてみました。
| 月の掛金 | 累計節税 | 65歳の資産 | 正味のメリット |
|---|---|---|---|
| 1.0万円 | 73万円 | 694万円 | +87万円 |
| 2.3万円 | 167万円 | 1,596万円 | +131万円 |
| 3.0万円 | 218万円 | 2,082万円 | +137万円 |
| 4.0万円 | 291万円 | 2,776万円 | +126万円 |
| 5.4万円 | 393万円 | 3,748万円 | +107万円 |
| 6.2万円 | 451万円 | 4,303万円 | +79万円 |
月3万円がピークで、そこから先は掛金を増やすほど正味が減ります。入口の節税は増え続けるのに、出口の累進課税がそれを上回って効いてくるからです。
「限度額が上がったから満額入れよう」が全員にとって正解ではない、というのがこの表の意味です。ただしこれは同じ年に受け取る前提で、10年ずらす前提なら月5.4万円あたりまで伸び続けます(ずらした場合は月6.2万円で+416万円)。
結論:確認する順番
- 自分の限度額を確認する(2026年12月分から変わります。会社員で企業年金がある方は会社の担当窓口へ)
- 会社の退職金の見込額と勤続年数を調べる。ここが分からないと出口の計算ができません
- 上の計算機に入れて、正味のメリットを見る
- 正味がマイナス、または掛金を増やすと減るなら、掛金を上限まで入れないという判断があり得ます
- 受け取り方(一時金/年金/併用)と受け取る年を、退職の10年以上前に考えておく
- 全額を一時金で受け取る前提です。年金として分割で受け取れば公的年金等控除が使え、一時金と年金を組み合わせる方法もあります。実際にはその併用が有利になるケースが多くあります
- 社会保険料を年収の15%として概算しています。配偶者控除・扶養控除・生命保険料控除などは入れていないので、それらがある方の実際の節税額はこれより小さくなります
- 利回りを毎年一定として計算しています。実際の相場は上下します
- 税制は変わります。とくに退職所得課税は見直しの議論が続いている分野です
- 本ページは特定の金融商品の購入を勧めるものではありません。具体的な受け取り方の判断は、必ず税務署または税理士にご確認ください(免責事項)
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※ 拠出限度額は厚生労働省の公表資料、税額の計算は国税庁タックスアンサー No.2260(所得税の速算表)・No.1410(給与所得控除)・No.1199(基礎控除)・No.1420(退職所得)・No.2735(同じ年に2か所以上から退職手当等)にもとづいています(2026年9月時点)。制度は変更されることがあります。