新NISAの「使い方」を書いた記事はすでに世の中に大量にあります。この記事はそこではなく、制度の細部で誤解されやすいところだけを、公式資料で1つずつ確認したものです。
金額が大きく動く話なので、出どころのはっきりしない解説ではなく金融庁のNISA特設サイトと国税庁タックスアンサーを根拠にしています。各項目に出典リンクを付けてあるので、必ず原典でも確認してください。
新NISAを何にどう使うかという話は新NISA・iDeCo・インデックス投資の使い方にまとめています。
- 生涯投資枠1,800万円は**時価ではなく簿価(買った値段)**で数える
- 売った枠が戻るのは翌年。しかも年間の上限は超えられない
- 成長投資枠1,200万円は内数。つみたて枠だけで1,800万円は埋められる
- 成長投資枠には買えない商品がある
- NISAで出た損失はなかったものとみなされる。損益通算も繰越控除もできない
- 口座は1人1つ。金融機関を変えても、持っている商品は移せない
① 1,800万円は「簿価」で数える
新NISAの非課税保有限度額は1,800万円です。ここでよくある誤解が、「値上がりして時価が1,800万円になったら、それ以上持てないのでは?」というもの。
そうではありません。金融庁の説明では、簿価残高方式(買ったときの金額で管理する方式)が採られています。
つまり、
- 1,800万円ぶん買った → 枠は使い切り
- その1,800万円が値上がりして3,000万円になっても、何も起きない。売る必要も、はみ出した分に課税されることもない
枠を消費するのは「買った金額」だけで、増えた分は枠に関係ありません。長期で持つほどこの設計の意味は大きくなります。
② 売った枠が戻るのは「翌年」。しかも年間の上限は超えられない
新NISAでは、商品を売ると使った枠が復活します。ここも細部が2つあります。
復活するのは翌年です。 金融庁の資料でも、売却した商品の簿価の分だけ翌年以降に非課税投資枠が復活する、という書き方になっています。今年売って今年すぐ買い直す、はできません。
そして年間投資枠は超えられません。 年間で買えるのは、つみたて投資枠120万円+成長投資枠240万円の合計360万円まで。仮に1,000万円ぶん売って枠が1,000万円復活しても、翌年に買い戻せるのは360万円までです。
出典:新しいNISA/金融庁
③ 成長投資枠1,200万円は「内数」
1,800万円の枠の中で、成長投資枠として使えるのは最大1,200万円までです。国税庁の記載でも、非課税保有限度額1,800万円の「内数として」成長投資枠のみの上限が1,200万円、という形になっています。
これが意味するのは、
- つみたて投資枠だけで1,800万円を埋めることは、できる
- 成長投資枠だけで1,800万円を埋めることは、できない(最大1,200万円)
つみたて投資枠と成長投資枠は別々の2つの財布ではなく、1,800万円という1つの財布の中に、成長投資枠1,200万円という上限線が引いてあるという理解が正確です。
④ 成長投資枠には買えない商品がある
「成長投資枠なら上場株式も投資信託も自由に買える」と思われがちですが、除外されているものがあります。金融庁の資料では、次の2つが対象から外れています。
- 整理銘柄・監理銘柄(上場廃止が決まった、または可能性がある銘柄)
- 信託期間20年未満の投資信託/毎月分配型の投資信託/デリバティブ取引を用いた一定の投資信託
除外の考え方はシンプルで、長期の資産形成に向かないものを外しているということです。
- 信託期間が短い → 長期保有できない
- 毎月分配型 → 分配のたびに元本を取り崩す構造になりやすい
- デリバティブを使った高レバレッジ型 → 値動きが激しく長期保有に向かない
「NISAで買えない=悪い商品」という意味ではありませんが、制度の設計思想が長期・分散・積立にあることは、この除外リストからはっきり読み取れます。
出典:新しいNISA/金融庁
⑤ NISAの損失は「なかったもの」になる
これが一番見落とされやすく、かつ金額に効く話です。
NISA口座は利益が非課税になる制度ですが、逆に損失も税務上は存在しないことになります。国税庁タックスアンサーには、非課税口座で生じた損失は「ないものとみなされます」と明記されており、特定口座・一般口座の譲渡益や配当との損益通算はできず、繰越控除もできないとされています。
課税口座なら、こういうことができます。
- A株で50万円の損、B株で50万円の利益 → 相殺して課税ゼロ(損益通算)
- 今年100万円の損 → 翌年以降3年間の利益と相殺(繰越控除)
NISA口座では、このどちらも使えません。 100万円の損が出ても、それは税務上「何も起きなかった」扱いです。
- NISAは「利益が出る前提」でこそ得な制度です。短期売買で損を出すと、非課税のメリットを受けられないうえに、損失の救済もありません
- 値動きの激しい個別株を短期で回す用途には、制度上向いていません
- 長期のインデックス投資が勧められるのは、精神論ではなくこの非対称性があるからという側面があります
⑥ 口座は1人1つ。金融機関を変えても商品は移せない
金融庁は「口座は1人につき1口座のみ開設可能」とし、金融機関の変更は年単位で可能としています。
ここで実務的に効くのが、変更しても、前の金融機関で買った商品は移せないという点です。変更後はこうなります。
- 前の金融機関の口座:新規の買付はできない。保有の継続・売却・配当の受取はできる
- 新しい金融機関の口座:ここから先の買付を行う
つまり金融機関を変えると、NISAの資産が2社にまたがったままになります。管理が面倒になるので、最初に選ぶときは「今のキャンペーン」より長く使えるかで決めたほうが結果的に楽です。
また、つみたて投資枠と成長投資枠を別々の金融機関に分けることもできません。同じNISA口座の中で一括管理される仕組みです。
あわせて押さえておくこと
2024年からの新NISAでは、旧制度から次の2点が変わっています。
- 非課税保有期間は無期限(旧つみたてNISAは20年、一般NISAは5年でした)
- 口座開設期間は恒久化(期限つきの制度ではなくなりました)
「いつまでに始めないと損」という制度ではなくなった、ということです。急かす情報を見かけたら、この2点を思い出してください。
まとめ
- 枠を消費するのは買った金額。値上がり分は枠に影響しない
- 売った枠の復活は翌年、しかも年間360万円の上限内
- 成長投資枠1,200万円は1,800万円の内数
- 成長投資枠には除外商品がある(長期保有に向かないもの)
- NISAの損失はなかったものとみなされ、救済がない
- 1人1口座。金融機関を変えても保有商品は移せない
制度の細部を押さえると、新NISAが「長期で持ち続ける人がいちばん得をするように設計されている」ことが見えてきます。売買のタイミングを当てにいく道具ではありません。
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出典
*本記事は2026年8月時点の公表内容にもとづく解説です。**税制・制度は変更されることがあります。*実際の手続きや判断の前に、必ず金融庁・国税庁の最新の情報および取引先の金融機関でご確認ください。本記事は特定の金融商品の購入を勧めるものではありません(免責事項)。