投資を始めようとすると、いきなり選択肢が多すぎて止まります。新NISA、iDeCo、インデックス、高配当株、個別株。どれから手をつければいいのか。
会社員がFIREを目指す場合、決めることは3つだけです。何に投資するか(商品)/どの箱に入れるか(制度)/いくら入れるか(金額)。 この記事は、その3つを順番に決めるためのまとめです。
- 土台は低コストのインデックスファンド。理由は「勝てるから」ではなく手数料の差が確実に効くから
- 箱は新NISAが最優先。生涯1,800万円の枠は元本ベースで、含み益では減らない
- 1,800万円を埋めるのに月5万円なら30年、月10万円なら15年。埋める速さより、途中でやめないこと
- iDeCoは節税が強力だが60歳まで引き出せない。FIREの時期によっては足かせになる
決める①:何に投資するか(インデックスが土台になる理由)
インデックス投資が勧められる理由は、「必ず儲かるから」ではありません。確実に効くのがコストだけだからです。
将来のリターンは誰にもわかりませんが、手数料は契約した瞬間に確定します。 信託報酬が年0.1%のファンドと年1.5%のファンドでは、差は年1.4%。これが20年、30年と積み重なります。
金融庁も「長期・積立・分散」を資産形成の基本として繰り返し示しており、その文脈で低コストのインデックスファンドが選ばれてきました。プロが運用するアクティブファンドでも、手数料を引いたあとで市場平均を上回り続けるのは簡単ではない、というのが長年の議論です。
- インデックス投資でも元本割れは起こります。市場全体が下がれば資産も下がります
- 「最強」という言葉が指しているのはコスト構造の合理性であって、成績の保証ではありません
- 過去のリターンは将来を保証しません。特定の商品を推奨するものではありません
決める②:どの箱に入れるか(新NISAが最優先)
同じ商品でも、どの制度で買うかで手取りが変わります。通常の課税口座では運用益に約20%課税されるため、まずは非課税の箱から埋めるのが基本です。
新NISAの押さえどころは3つです。
- 生涯投資枠は1,800万円。これは簿価残高方式、つまり買ったときの値段(元本)で管理されます。600万円で買ったものが1,000万円になっても、使った枠は600万円のまま
- 年間の上限は360万円(つみたて投資枠120万円+成長投資枠240万円)。したがって最短でも5年かけないと埋まりません
- つみたて投資枠だけでも1,800万円まで使えます(成長投資枠は上限1,200万円)
1,800万円を埋めるのに何年かかるか
「1,800万円」という数字は大きく見えますが、自分の積立額で割ると具体的になります。

年間の投資上限360万円の範囲内で、積立額だけで枠を埋めた場合の単純計算です。運用益は枠を消費しないため考慮していません。
| 毎月の積立額 | 1,800万円が埋まるまで |
|---|---|
| 3万円 | 50年 |
| 5万円 | 30年 |
| 10万円 | 15年 |
| 15万円 | 10年 |
月3万円だと50年。ここで「じゃあ意味がないのか」と思う必要はありません。枠を全部使い切ることは目的ではないからです。枠は上限であって、ノルマではありません。
参考までに、月3万円を20年間、年4%で運用できた場合の評価額は約1,100万円(元本720万円)。増えた分の約380万円が複利の働きです。もちろんこれは想定利回りでの計算で、下振れも上振れもします。
大事なのは、埋める速さを競って生活防衛資金まで投資に回してしまわないことです。順番は生活費 → 生活防衛資金 → 投資。この順番を守れば、暴落時に狼狽して売る確率がぐっと下がります。
決める③:iDeCoをどう扱うか
iDeCoの強みは、掛金が全額所得控除になることです。運用益が非課税なだけのNISAと違い、拠出した年から税金が戻ります。
たとえば所得税10%・住民税10%の会社員が月2万円(年24万円)拠出すると、年4.8万円ほどの節税になる計算です(税率は所得によって変わります)。運用がプラスでもマイナスでも、この節税分は先に確定します。
ただし、FIREを目指す人には大きな注意点があります。
- 原則60歳まで引き出せない。50代でFIREしたい人には、その間の生活費に使えない資産になる
- 受け取り時には課税対象になる(退職所得控除・公的年金等控除の範囲内なら軽減される)
- 口座管理手数料が毎月かかる
- 掛金の上限は職業・企業年金の有無で変わる
つまりiDeCoは「60歳以降の自分」への仕送りです。FIREの目標時期が60歳より前なら、NISAを優先し、iDeCoは余力の範囲でという判断になります。逆に60歳前後を想定しているなら、節税の強さは魅力的です。
番外:高配当株で配当生活は可能か
「配当だけで暮らす」という選択肢についても、数字を出しておきます。
年間支出300万円を配当でまかなう場合、**配当利回り3.5%(税引前)**とすると、税金約20%が引かれるので手取り利回りは約2.8%。必要な元本は、
300万円 ÷ 2.8% = 約1億700万円
インデックスの取り崩し(4%ルール)なら7,500万円だったのに対し、配当だけで賄おうとすると必要額は大きく膨らみます。配当は「ゴール」というより、積み上げの途中で心を折れにくくするための道具と考えるのが現実的です。
配当利回りは株価が下がると見かけ上あがるため、高利回りの銘柄が必ずしも良い投資対象とは限りません。減配のリスクもあります。
明日からできる一歩
3つを順番に決めるだけです。
- 商品:低コストのインデックスファンドを土台にすると決める
- 箱:まず新NISA。60歳以降が視野に入っているならiDeCoも併用
- 金額:生活防衛資金を確保したうえで、無理なく続けられる額にする
そのうえで、金額を増やしたいなら投資の話ではなく家計の話になります。到達年数を決めるのは利回りより貯蓄率です。そちらはFIREに必要な金額と年数の出し方にまとめました。
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