早期リタイアの計画で、一番見落とされる固定費が健康保険料です。
会社員の間は給料から天引きされ、しかも会社が半分払ってくれています。辞めた瞬間、その半分がなくなり、全額が自分の負担になります。
そして本当の落とし穴はここです。国民健康保険料は前年の所得で決まります。つまりリタイア1年目は、まだ働いていた年の高い所得で計算されます。
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※ 国保の料率は市区町村ごとに違います。ここは東京23区(世田谷区)の令和8年度の料率です。 お住まいの自治体の料率でご確認ください(多くの自治体が試算システムを公開しています)。 賦課基準額は「前年の所得 − 住民税基礎控除43万円」で、扶養控除・社会保険料控除・医療費控除などは引けません(所得税とはまったく違います)。 任意継続は最大2年で、標準報酬月額は32万円が上限、保険料は全額自己負担です。 退職金・失業給付は国保の算定所得に含まれません。家族の被扶養者になれる場合は保険料ゼロなので、まずそれを検討してください。
結論:1年目と2年目で23倍の差がつきます
年収600万円・単身・40〜64歳の方が、リタイア後の所得ゼロで暮らす場合です。
| 国民健康保険 | 任意継続 | |
|---|---|---|
| 1年目 | 596,166円 | 449,280円 |
| 2年目 | 25,462円 | 449,280円 |
| 3年目以降 | 25,462円 | — (最大2年) |
国保は1年目596,166円、2年目25,462円。23倍の差です。
理由は2つあります。
- 前年の所得がゼロになる。国保の所得割は「前年の所得 − 43万円」に料率をかけます。所得ゼロなら所得割もゼロです
- 均等割が7割軽減される。世帯の前年所得が43万円以下なら、人数分の均等割(医療47,600円+後期17,600円+介護17,800円+子ども1,873円)が7割引きになります
残るのは軽減後の均等割だけ。それが25,462円です。
最適解は「1年目は任意継続、2年目から国保」
上の表をもう一度見てください。
- 1年目は任意継続(449,280円)のほうが146,886円安い
- 2年目は国保(25,462円)のほうが423,818円安い
つまり1年目は任意継続にして、2年目から国保に切り替えるのが最適です。
| 選び方 | 2年間の合計 |
|---|---|
| 2年とも国保 | 621,628円 |
| 2年とも任意継続 | 898,560円 |
| 1年目は任意継続 → 2年目から国保 | 474,742円 |
どちらか一方に統一するより146,886円安くなります。
以前は「任意継続は原則2年間やめられない(保険料を払わないと自動的に資格喪失)」というのが常識でした。
いまは違います。協会けんぽに「任意継続被保険者資格喪失申出書」を出せば、申出が受理された月の翌月1日で資格を失えます(協会けんぽ)。
3月末で任意継続をやめて4月から国保に入りたいなら、3月中に申出書を提出します。「わざと払わない」必要はもうありません。
逆転する条件①:扶養家族がいると任意継続が圧勝
任意継続は、被扶養者が何人いても保険料が変わりません。一方、国保には加入者一人ひとりに均等割がかかります。
年収600万円・40〜64歳で、世帯人数を変えて計算しました。
| 世帯 | 国保1年目 | 国保2年目 | 任意継続 |
|---|---|---|---|
| 単身 | 596,166円 | 25,462円 | 449,280円 |
| 夫婦 | 663,239円 | 45,584円 | 449,280円 |
| 夫婦+子1 | 728,439円 | 65,144円 | 449,280円 |
| 夫婦+子2 | 793,639円 | 84,704円 | 449,280円 |
家族が増えても任意継続は449,280円のまま。1年目の差は、単身なら14.7万円ですが、夫婦+子2人なら34.4万円になります。
ただし2年目以降は国保が圧倒的に安いままなので、「1年目は任意継続」の判断がより強く効くということです。
逆転する条件②:年収が低いと任意継続の旨味がない
任意継続の保険料は「退職時の標準報酬月額」と「32万円」の低いほうで計算されます(協会けんぽの令和8年度の上限)。
つまり年収が高い人ほど、この上限に守られて得をします。
| 退職前の年収 | 任意継続(年) | 国保1年目(単身) | 安いほう |
|---|---|---|---|
| 400万円 | 449,280円 | 388,006円 | 国保 |
| 600万円 | 449,280円 | 596,166円 | 任意継続 |
| 800万円 | 449,280円 | 822,540円 | 任意継続 |
| 1,000万円 | 449,280円 | 1,043,269円 | 任意継続 |
| 1,500万円 | 449,280円 | 1,130,000円※ | 任意継続 |
※国保の賦課限度額(医療67万+後期26万+介護17万+子ども3万=113万円)に張り付きます。
年収400万円台までは、1年目から国保のほうが安くなります。逆に年収1,000万円を超えると、任意継続との差は年60万円以上になります。
逆転する条件③:リタイア後も収入があるか
上の計算は「リタイア後の所得ゼロ」の前提です。副業や配当で所得があると、2年目以降の国保も上がります。
そして国保でとくに気をつけるべきなのが、控除の少なさです。
その前に:家族の扶養に入れるなら、それが最強です
ここまで国保と任意継続を比べてきましたが、第3の選択肢があります。
配偶者や子どもが会社員なら、その被扶養者になれる場合があります。この場合、健康保険料はゼロです。
- 一般に年間収入130万円未満(60歳以上や障害者は180万円未満)で、被保険者の収入の半分未満などの条件があります
- 失業給付は「収入」に含まれるので、受給中は入れないことが多い点に注意
- 判断するのは健康保険組合なので、必ず配偶者の勤務先経由で確認してください
FIREして無収入になるなら、条件を満たす可能性は十分あります。年間45万円の差が出る話なので、最初に確認する価値があります。
まとめ:辞める前にやること
- 家族の被扶養者になれるか確認する。入れれば保険料ゼロです
- 入れないなら、1年目は任意継続・2年目から国保が基本形。当ブログの計算では2年間で146,886円の差
- ただし年収400万円台までなら、1年目から国保のほうが安い
- 扶養家族が多いほど任意継続が有利。人数が増えても保険料は変わりません
- 任意継続は申出書でやめられます(喪失希望月の前月中に提出)
- 自分の自治体の料率で確認する。国保の料率は市区町村ごとに違います
- 国保の料率は東京23区(世田谷区)の令和8年度のものです。市区町村によって料率も限度額も違います。多くの自治体が試算システムを公開しているので、必ずご自身の自治体でご確認ください
- 任意継続は協会けんぽ東京支部の令和8年度の料率です。健康保険組合の場合はその組合の料率になります(組合によっては協会けんぽより有利なことがあります)
- 退職金・失業給付は国保の算定所得に含めていません(実際に含まれません)
- 年度途中の加入・脱退による月割り、非自発的失業者の軽減特例(倒産・解雇等の場合、前年給与所得を30/100とみなす制度)は考慮していません。会社都合の退職ならこの特例が使えるので、必ず自治体にご相談ください
- 制度は変わります。判断の前に必ず自治体・協会けんぽ・健保組合にご確認ください(免責事項)
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※ 国保の料率・軽減基準は世田谷区国民健康保険条例の一部を改正する条例(令和8年2月25日)および保険料の計算方法、任意継続は協会けんぽ令和8年度保険料額表(東京支部)にもとづいています(2026年9月時点)。計算に使ったコードは tools/calc_kenpo_ref.py にあります。