FIREを考えるとき、必ず出てくる不安がこれです。「早く辞めたら、年金はどれだけ減るんだろう」

ところが世の中の年金試算ツールは、ほぼ全部「このまま働き続けたらいくら」しか出しません。早期リタイアを前提にした試算ができる。それがこのページの計算機です。

入力はすべてブラウザの中で処理され、どこにも送信されません。

年金見込額シミュレーター(早期リタイア対応) 何歳で仕事を辞めると、年金がいくら減るのかを計算します
老齢基礎年金(月)
老齢厚生年金(月)
合計(月)
受給開始年齢ごとに比べる/計算の内訳

※ 昭和31年4月2日以後生まれ・昭和37年4月2日以降生まれ(繰上げ0.4%)の前提です。 加給年金・振替加算・経過的加算・厚生年金基金・共済組合の期間は含めていません。 平成15年3月以前の加入期間は考慮していません(2003年より前に就職した方は実際の額がこれより増えます)。 年金額は毎年度改定され、将来のマクロ経済スライドによる調整も見込まれます。この試算は令和8年度の水準で固定した概算です。 実際の見込額は必ずねんきんネットでご確認ください。

結論:55歳で辞めても、年金は85%残ります

先に答えを書きます。23歳就職・平均年収600万円の人が、何歳で辞めるかで比べました(受給開始は65歳、辞めたあとも60歳までは国民年金を払う前提)。

辞める年齢 老齢基礎年金 老齢厚生年金 合計(月額) 65歳まで働いた場合との比
45歳 847,300円 723,492円 130,899円 70.5%
50歳 847,300円 887,922円 144,602円 77.9%
55歳 847,300円 1,052,352円 158,304円 85.2%
60歳 847,300円 1,216,782円 172,007円 92.6%
65歳 847,300円 1,381,212円 185,709円 100%

55歳で辞めても月158,304円。65歳まで働いた場合との差は月27,405円です。

「早期リタイアしたら年金がスカスカになる」と思われがちですが、そこまでではありません。理由は2つあります。

なぜ思ったほど減らないのか
  1. 老齢基礎年金は減りません。満額(年847,300円)の条件は「20歳から60歳まで40年間、保険料を納めること」。会社を辞めても国民年金を払い続ければ満額のままです
  2. 厚生年金は「加入月数に比例」するだけ。55歳で辞めても、23歳からの32年分はそのまま残ります。ゼロになるわけではありません
ランカ
ランカ思ったより減らないんですね
ずきん
ずきんええ。ただし次に書く落とし穴を踏むと話が変わります。ここが早期リタイア特有の論点です。

落とし穴:辞めたあと、国民年金を払わないと

会社を辞めると、あなたは国民年金の第1号被保険者になります。つまり自分で保険料を払う立場です。ここを払わないと、厚生年金だけでなく基礎年金まで削れます。

辞める年齢 国民年金を払う 払わない
45歳 1,570,792円 1,253,054円 年−317,738円
50歳 1,735,222円 1,523,397円 年−211,825円
55歳 1,899,652円 1,793,740円 年−105,912円

45歳で辞めて国民年金を払わないと、年31.8万円減ります。納付月数が480か月から300か月に落ちるためです。

国民年金の保険料は年約21万円。45歳から60歳までの15年間で約315万円です。それで年31.8万円が一生増えるなら、10年で元が取れます。

早期リタイアするなら、ここは削らない

生活費を切り詰めたいとき、真っ先に止めたくなるのが国民年金の保険料です。でもこれは支出ではなく、利回りの高い買い物だと考えたほうがいい。

年21万円の保険料で、年31.8万円(45歳リタイアの場合)の終身年金が買える計算になります。民間の年金保険でこの条件は出てきません。

なお、所得が下がっている期間は保険料の免除・猶予を申請できます。免除された期間も年金額に一部反映されます(全額免除なら2分の1)。未納と免除はまったく違うので、払えない時期は必ず申請してください。

繰上げ・繰下げの損益分岐は「年数」で見ると一定でした

もうひとつ、計算していて見つけたことがあります。

年金は受け取り始める年齢を60〜75歳の間で選べて、繰り上げると月0.4%減、繰り下げると月0.7%増になります(日本年金機構「老齢年金ガイド 令和8年度版」)。

「何歳で受け取るのが得か」はよく議論されますが、受け取り始めてからの年数で見ると、答えはきれいに一定でした。

受給開始 増減率 65歳開始との損益分岐 開始からの年数
60歳 76.0% 80.8歳 20.8年
61歳 80.8% 81.8歳 20.8年
62歳 85.6% 82.8歳 20.8年
63歳 90.4% 83.8歳 20.8年
64歳 95.2% 84.8歳 20.8年
65歳 100%
66歳 108.4% 77.9歳 11.9年
68歳 125.2% 79.9歳 11.9年
70歳 142.0% 81.9歳 11.9年
72歳 158.8% 83.9歳 11.9年
75歳 184.0% 86.9歳 11.9年

繰り下げるなら、何歳まで繰り下げても「受け取り始めて11.9年」で元が取れます。繰り上げるなら、「受け取り始めて20.8年」より長生きすると損になります。

しかもこれは年収にもリタイア年齢にも一切関係ありません。年金額そのものが式から消えるからです。

なぜ一定になるのか

増減率が月単位の一次式(繰下げ月0.7%=年8.4%、繰上げ月0.4%=年4.8%)だからです。

損益分岐までの年数は「1 ÷ 年あたりの増減率」になります。

  • 繰下げ:1 ÷ 0.084 = 11.9年
  • 繰上げ:1 ÷ 0.048 = 20.8年

だから「何歳で受け取るか」で悩むのではなく、「受け取り始めてから何年生きるか」だけを考えればいい、ということになります。

平均余命に当てはめると、答えが出ます

厚生労働省の令和6(2024)年簡易生命表の平均余命です。

年齢
60歳 23.63年 28.92年
65歳 19.47年 24.38年
70歳 15.60年 19.97年
75歳 12.08年 15.75年

上の分岐年数と並べてみます。

  • 繰下げの分岐は11.9年。70歳時点の平均余命は男15.60年・女19.97年。男女とも大きく超えています
  • 繰上げの分岐は20.8年。60歳時点の平均余命は男23.63年・女28.92年。男女とも超えています

つまり平均寿命どおりに生きるなら、繰下げは得、繰上げは損という結論になります。しかも75歳まで繰り下げても、平均余命12.08年(男)は11.9年をわずかに上回ります。

ずきん
ずきんただし平均は平均です。繰下げは「長生きしたときに困らないための保険」として見るのが正しくて、損得だけの話ではありません。逆に、健康に不安がある方や、いま現金が要る方が繰り上げるのは合理的な判断です。

FIREする人にとっての意味

ここまでを、FIREの設計に落とし込みます。

年金は「つなぎ期間」問題を解く鍵になります

資産寿命シミュレーターでも書いたとおり、日本の会社員のFIREで本当に厳しいのはリタイアから年金開始までのつなぎ期間で、その先ではありません。

55歳でリタイアして月158,304円の年金があるなら、65歳以降に資産から取り崩す額はそのぶん減らせます。必要なのは「一生分」ではなく「つなぎ期間の分+その後の不足分」です。

そして資産に余裕があるなら、繰下げは非常に相性がいい。取り崩せる資産で70歳までしのげば、そこから先は142%の終身年金が入ります。長生きリスクへの備えとして、これ以上の商品はありません。

順番にすると、こうなります。

  1. 辞めたあとの国民年金は必ず払う(払えない時期は免除申請)。基礎年金を削らない
  2. 厚生年金の減りを計算に入れる。上の計算機で「辞める年齢」を動かせば見えます
  3. つなぎ期間を資産寿命シミュレーターで確認する
  4. 資産に余裕があるなら繰下げを検討する。判断基準は「受け取り始めて11.9年生きられるか」
  5. 必ずねんきんネットで実際の見込額を確認する。この計算機は概算です

年収が高くても、年金は無限には増えません

最後にもうひとつ。厚生年金の計算に使う報酬には上限があります。標準報酬月額は65万円まで、賞与は1回150万円までです。

そのため、ある年収を超えると年金額は頭打ちになります。しかも上限が月給と賞与で別枠なので、賞与の割合によって頭打ちの位置が変わります。

給与の構成 年金が頭打ちになる年収
賞与なし(全額が月給) 約780万円
賞与が年収の1/4 約1,200万円
賞与が年収の1/6 約1,800万円

平均標準報酬額の上限は月90万円(=65万円×12+150万円×2回、を12で割った額)。

年収1,200万円の人の年金月額は約258,607円で、年収600万円の185,709円の1.4倍にしかなりません(年収は2倍なのに)。年金は所得再分配の仕組みなので、高年収ほど「払った割に戻らない」構造です。裏を返せば、高年収の人ほど自分で資産形成する必要があります。

この計算機の限界
  • 昭和31年4月2日以後生まれ・昭和37年4月2日以降生まれ(繰上げ0.4%)の前提です
  • 加給年金・振替加算・経過的加算・厚生年金基金・共済組合の期間は含めていません(実際の額はこれより増えることがあります)
  • 平成15年3月以前の加入期間を考慮していません。2003年より前に就職した方は実際の額がこれより増えます
  • 年金額は毎年度改定され、マクロ経済スライドによる調整も見込まれます。この試算は令和8年度の水準で固定した概算です
  • 損益分岐の計算に税金・社会保険料を入れていません。繰下げで年金額が増えると税・保険料も増えるので、手取りベースの分岐点はもう少し後ろになります
  • 実際の見込額は必ずねんきんネットでご確認ください免責事項

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※ 年金額と計算式は日本年金機構「老齢年金ガイド 令和8年度版」(老齢基礎年金の満額 年額847,300円、報酬比例部分の乗率 5.481/1000、繰上げ0.4%/繰下げ0.7%)、平均余命は厚生労働省令和6(2024)年簡易生命表にもとづいています(2026年9月時点)。