取り崩し期に「平均で年4%増える」とだけ置くと、相場の順番が消えます。退職直後に下落し、生活費のために安い資産を売ると、その後に相場が戻っても保有口数は戻りません。

ここでは未来予測ではなく、同じ平均リターンを置いた2つのストレスシナリオを比べます。

比較条件

項目 条件
退職時の資産 6,000万円
生活費 現在価値で月20万円、毎年2%増
10年間の年次リターン −20%が最初/最後、残り9年は約6.67%
算術平均 どちらも年4%
取り崩し 毎月取り崩し、残りを月次運用

相場が実際にこの順番になると主張するものではありません。極端な下落を置いた「順序の感度」を見るための入力です。

同じ平均4パーセントでも下落先行と下落後半で残高が分かれる10年間の比較グラフ
図1:下落先行と下落後半の残高推移。原データCSVも確認できます。

結果:同じ平均でも残高に差が出る

シナリオ 10年後の残高
1年目に−20%、その後は約6.67% 約5,280万円
9年運用した後、10年目に−20% 約6,060万円

差は約780万円です。生活費を取り崩しながら運用するため、最初の下落で減った資産が、その後の上昇に十分参加できないからです。

この差は「退職直後に必ず現金化すべき」という意味ではありません。資産配分、生活費の調整、年金や仕事の収入、税・社会保険料によって結果は変わります。

一定利回りの計算機と役割を分ける

資産寿命シミュレーターは、取り崩し率・一定利回り・インフレ率の関係を切り分ける道具です。相場の順序は表現しないので、結果を成功確率として読みません。

統合FIRE計画シミュレーターでは、希望退職年齢、年金開始年齢、サイド収入、住宅ローン完済年齢を入れて、まず固定条件の資金計画を比較できます。そこに複数のストレス条件を別途置き、計画に余裕があるかを確認します。

なお、統合計算機と資産寿命シミュレーターは一定利回りを置くモデルで、年ごとの−20%の位置までは入力できません。この記事の順序比較は本文の条件と公開CSVで再現します。

計算期間内で枯渇しないことと、将来の安全は別です
実際の運用には元本割れ、相場の急変、税、社会保険料、年金額の改定があります。1つの利回りや1つのシナリオだけで退職時期を決めず、悲観側の条件でも生活を維持できるか確認してください。

※ 数値は上表の条件を月次で計算したストレス例です。平均リターンは将来の期待値や保証ではなく、投資判断を示すものでもありません。