住宅ローンを借りた人の75.0%が変動金利を選んでいます。そして同じ調査で、73.7%が「今後1年で金利は上がる」と答えています。

上がると思っているのに、上がったら困るほうを選んでいる。この矛盾がどこから来るのかというと、52.0%が「金利リスクを理解できていない」と答えているからです。

そこで、変動金利が何%まで上がったら損になるのかを計算しました。計算に使ったコードは tools/make_kinri_charts.py にあります。

まず、みんな何を選んでいるのか

住宅金融支援機構の住宅ローン利用者の実態調査(2026年1月調査)(令和8年2月20日公表)の結果です。

選んだ金利タイプと、これから選ぶ人の希望

金利タイプ 実際に借りた人 これから借りる人
変動型 75.0% 37.0%
固定期間選択型 14.9% 32.1%
全期間固定型 10.1% 30.9%

実際に借りた人=2025年4月〜9月に住宅を取得した1,237人。これから借りる人=今後5年以内に取得予定の1,500人。

すでに借りた人は4人に3人が変動型。ところがこれから借りる人では37.0%まで下がり、全期間固定型が30.9%まで増えています(2024年4月調査比 +4.6ポイント)。

金利観の変化もはっきり出ています。

実際に借りた人 これから借りる人
今後1年で「上昇する」 73.7%(+8.0pt) 62.0%(+6.0pt)
金利リスクの理解に不安 52.0% 61.3%
ランカ
ランカ上がると思っているのに変動を選ぶって、どういうことですか?
ずきん
ずきん目先の返済額が安いからです。そして半分の人は「上がったらいくら増えるのか」を具体的に知らないまま契約している。だったら計算してみようというのがこの記事です。

前提:いま固定は年3.460%です

比較の相手を先に置きます。全期間固定の代表である【フラット35】の2026年9月の最も多い金利は年3.460%です(借入期間21年以上35年以下・融資率9割以下・新機構団信付き。金利情報)。

商品 最も多い金利
フラット20(20年以下) 年3.140%
フラット35(21〜35年) 年3.460%
フラット50(36〜50年) 年3.700%

シミュレーションの条件は、借入3,000万円・35年・変動0.5%スタートとします。このとき当初の毎月返済額は77,876円です。全期間固定3.460%なら123,293円なので、月45,417円の差があります。この差の大きさが、75%が変動を選ぶ理由です。

計算①:6年目に金利が上がったらどうなるか

変動金利には多くの銀行で5年ルール(返済額の見直しは5年ごと)と125%ルール(見直し後の返済額は従前の1.25倍まで)があります。それを織り込んで計算しました。

6年目に金利が上がったときの総返済額の増加

6年目からの金利 総返済額 0.5%のままとの差 最終的な毎月返済額
0.5%のまま 32,707,757円 77,876円
1.5% 37,011,643円 +430万円 89,831円
2.5% 41,839,485円 +913万円 104,421円
3.5% 47,548,353円 +1,484万円 123,893円
4.5% 54,995,288円 +2,229万円 155,862円

金利が1%上がるごとに、総返済額はおよそ450〜750万円ずつ増えます。

計算②:損益分岐は年4.10%でした

では、何%を超えたら「固定にしておけばよかった」ことになるのか。

全期間固定3.460%で借りた場合の総返済額は51,783,028円です。変動0.5%スタートで6年目から金利が一定になるとして、この額に並ぶ金利を二分探索で求めました。

損益分岐=年4.10%

6年目以降ずっと年4.10%を超える水準が続いたら、全期間固定3.460%を選んでおいたほうが得だったことになります。

固定の3.460%より0.64ポイント高い点に注目してください。最初の5年間を0.5%で走れたぶん、変動には貯金があるからです。

つまり「固定金利を超えたら負け」ではありません。変動が固定を少し超えても、序盤の安さで取り返せているという関係です。

これは当ブログの繰上返済 vs 投資シミュレーターで見つけた「損益分岐=ローン金利ちょうど」という関係とは別の話です。あちらは同じローンの中での比較、こちらは商品選びの比較になります。

計算③:未払利息は年3.12%から発生します

ここが5年ルールの本当の怖さです。

5年ルールで返済額が据え置かれている間も、利息は実際の金利で計算されます。金利が上がりすぎると、利息が毎月の返済額を上回ってしまう。この差額が未払利息です。

未払利息が出はじめる金利(返済が進むほど上がる)

借入直後(残高3,000万円・返済額77,876円)で計算すると——

年3.12%を超えると、返済額を全額払っても利息すら払いきれません。

時点 残高 未払利息が出る金利
借入直後 3,000万円 年3.12%
5年後 2,603万円 年3.59%
10年後 2,196万円 年4.26%
20年後 1,350万円 年6.92%
未払利息が発生すると何が起きるか
  • 元金がまったく減りません。払っているのに残高が減らない状態になります
  • 払いきれなかった利息は繰り越されます(扱いは金融機関により異なります)
  • 返済額は5年間据え置かれたままなので、その間ずっと続きます

上の表のとおり、危険なのは借入から数年間だけです。残高が減れば閾値は上がり、20年後には年6.92%まで耐えられます。借りた直後の金利上昇が一番怖い——ここは資産運用の「シークエンス・オブ・リターン・リスク」とよく似た構造です。

計算④:5年ルールと125%ルールは、得ではありません

「5年ルールと125%ルールがあるから安心」という説明をよく見かけます。返済額の急増を防ぐ効果は確かにあります。ただし、総額では損をします。

6年目に3.5%へ上がった場合で比べました。

総返済額 最終的な毎月返済額
5年ルール・125%ルールあり 47,548,353円 123,893円
5年ルール・125%ルールなし 46,749,770円 116,881円
+798,583円 +7,012円

ルールがあるほうが、総返済額は約80万円多くなります。

理由は単純で、返済額を抑えている間は元金の減りが遅く、そのぶん利息がかかり続けるからです。ルールは負担を先送りする仕組みであって、負担を減らす仕組みではありません。

そもそもルールが無い銀行もあります

5年ルール・125%ルールは法律で決まっているものではなく、金融機関ごとの商品性です。ネット銀行を中心に、これらのルールを採用していない(金利が上がったらすぐ返済額が上がる)ところがあります。

自分の契約がどちらなのかは、契約書か銀行の商品説明で必ず確認してください。「5年は変わらないはず」と思い込んでいると、来月から返済額が上がることがあります。

結局どう考えればいいか

計算結果を並べると、判断の材料はこうなります。

  1. 変動0.5%スタートなら、損益分岐は年4.10%。固定3.460%より0.64ポイント上に余裕があります
  2. ただし年3.12%を超えると未払利息が出ます。借入直後の数年が一番危険で、10年経てば4.26%まで耐えられます
  3. 1%上がるごとに総返済額は450〜750万円増えます。「1%くらい」ではありません
  4. 5年ルール・125%ルールは総額では約80万円高くつきます。安心料と割り切るもので、得ではありません

そして繰上返済との関係です。当ブログの繰上返済 vs 投資シミュレーターで確認したとおり、繰上返済の"利回り"はローン金利そのものです。つまり——

ずきん
ずきん金利が上がるほど、繰上返済という「運用商品」の利回りも自動的に上がります。変動金利が4%になったら、繰上返済は年4%・無リスク・非課税の運用と同じ意味になる。だから金利上昇局面では、慌てて借り換えるより先に「繰上返済の魅力が上がった」と考え直すほうが筋がいいです。
この試算の前提と限界
  • 借入3,000万円・35年・元利均等・ボーナス返済なし。6年目以降は金利が一定として計算しています
  • 実際の変動金利は半年ごとに見直され、上下します。一本調子で上がり続ける前提は保守的な見積もりです
  • 借換えの手数料、団信、保証料、住宅ローン控除は含めていません(控除の影響は繰上返済ツールの記事で扱っています)
  • 未払利息の扱い、5年ルール・125%ルールの有無は金融機関によって異なります
  • 本記事は特定の金融商品を勧めるものではありません。契約内容は必ずご自身でご確認ください(免責事項

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※ 調査結果は住宅金融支援機構住宅ローン利用者の実態調査結果(2026年1月調査)、金利は同機構【フラット35】金利情報(2026年9月資金受取分)にもとづいています。総返済額・損益分岐・未払利息の閾値は公表値ではなく、上記の前提で筆者が計算したものです。計算に使ったコードは tools/make_kinri_charts.py にあります。